のびの木日記 ~未来への展望~

「A君と跳び箱」

A君の来所

小学2年生のA君は「のびの木」が開所してすぐに通い始めました。

利用を開始するにあたって、お父様とお母様親子そろって見学に来られ、A君の課題についていろいろと相談を受けました。

友達との距離感がつかめず、すぐにトラブルを起してしまう。
少年スポーツ教室では、無駄話が多く落ち着かず、指導員の指示に応えられない。
ちょっかいを出してふざけてしまう。
並んで順番を待てない。
など、とても心配な様子でした。

それまでのA君

学校では、「運動能力も学力も低いわりに口だけが達者で生意気だ」といじめられました。 A君の言動をうっとうしく感じる友達が増え、次第に居場所がなくなりました。
自尊感情は損なわれていき、1年生の後半は学校にも行けなくなってしまったそうです。

お母様の願いは、「運動能力を向上させて自信をつけて欲しい」、「みんなと一緒に並んで順番を守って欲しい」、また「座って人の話を聞けるようになって欲しい」、というものでした。
町のスポーツ教室では、個別に対応した十分なケアや指導ができなかった為、すがる思いで「のびの木」を訪ねて来られたそうです。

A君とのびの木

療育を開始してみると、なるほど、お母様の言う通り短い時間でも座っていられない、すぐに隣の子に寄りかかる、床に寝そべるなど、体幹保持が全くできませんでした。
他の子に対しては挑発的で生意気な言葉を浴びせ、手や足もすぐに出るので、自然と指導員から叱られる回数も増えました。

A君は、知能は低くありません。特別な関わり方をすればプライドが傷つき、さらに自尊感情を損なってしまう恐れがあります。
かと言って、個別に特別な指導をしなければスポーツ教室の対応と同じになってしまいます。

とにかくA君に対しては、押したり引いたりしながらコミュニケーションを円滑にする方法を探る毎日でした。
時には指導員の雷が落ち、時には大人の対応をし、時には思いっきり甘やかし…神経をすり減らす日々が続きました。

変われたきっかけ

A君が通い初めて1年が経過し2年生も終わりに近づいたある日、きっかけは突然現れました。
苦手だった跳び箱を偶然にも正しいフォームで跳んで、今まで跳べなかった高い段を跳べてしまったのです。

これまでは、おちゃらけて不真面目に適当にやっていたために、本来持っていたポテンシャルを活かすことができなかったのです。

綺麗で正しい姿勢で取り組むことで、さらに上のステージに上がれることを経験したA君は、跳び箱以外の運動種目でも自信を持って参加することが増え、過去には匙を投げられてしまった、町のスポーツ教室にも積極的に参加するようになっていきました。

A君の成長、そして「のびの木」卒業

テニス、水泳、かけっこ教室、ボール投げ教室…遅れていたものを取り戻すように、お母様はA君が興味を示した教室に通わせ始めました。
そこでは、つまはじきにされることもなく他の子と一緒になって挑戦できるまで成長しましたと、お母様から報告をいただきました。

「次は学力を向上させたいので、のびの木を卒業したい」と相談を受け、約2年通ってきた「のびの木」の利用を終了しました。

我々にとっては開所以来一緒に過ごしたA君の存在はとても大きく、彼の成長がどれだけ励みになったか知れません。
卒業するのは寂しいですが、この喜びをまた味わうために、また明日から子供たちと接していきたいと思います。